Edmond Clement singing Le Reve from Massenet’s Manon. Recorded for Victor in 1911.
Manon – Le Réve (Massenet)
(テノール独唱) エドモン・クレーマン(ピアノ伴奏) フランツ・ラ・フォルジュ
歌劇『マノン』はアベ・プレヴォの有名な小説『マノン・レスコー』に基づいた。マスネの傑作であって、彼の優美で繊細で華奢な楽風は、この美しい悲劇に全く適して彼の代表作となった。筋は浮気な美人マノンが愛人デ・グリューを棄て、老金満家ジェロントの夫人となったが、もとの愛人デ・グリューと逃走を企て、ジェロントのために告訴されて捕らえられ、米国に追放されるが、最後に彼と共に渡米したグリューの腕に抱かれて異境に果てるというのである。
この『夢』は、第二幕パリのヴィヴァンヌ街にあるデ・グリューとマノンの愛の巣の場面で、ハープ伴奏でデ・グリューによって歌われるもので、昨夜天国のような美しいところで、花に埋もれた小さい家に居る夢を見たが、そこにはマノンが居なかったので、少しも楽しくはなかったとその純情を歌う静かな名曲である。
不安も忘れていた、あの二人っきりで居た楽しい瞬間! あゝ、マノンよ、私は歩きながら夢を見ている。
眼を閉ざせば私にはあのささやかな隠れ家がすぐそこに見える、森の奥なる真白な小さな家だ! 清らかな楽しげな小川、そこには葉陰がうつっていて、小鳥と一緒に歌うのだ! 天国だ! あゝ、そうじゃない! 何もかも悲しく暗いのだ、たった一つのものが欠けているから、マノンが居ないからだ!
いや、いや! そこに我々は暮らそう、マノンよ、お前が望みさえすれば!
