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第57回ニューイヤーオペラコンサート
~花が誘う 歌物語~
放送:2014年1月3日 夜7時~9時 Eテレ・FM生放送オペラの名場面、名アリアを日本を代表するオペラ歌手たちが披露するニューイヤーオペラコンサート。今年は「花が誘う歌物語」と題し、花をテーマにした名曲の数々をお届けします。
特別ゲストとしてウィーン・リング・アンサンブルが登場。喜歌劇「こうもり」の名旋律を聞かせてくれます。またトークゲストとして華道家の假屋崎省吾さん、演出家の宮本亜門さんが登場します。
NHKホールから生放送でお送りする、新春恒例のニューイヤーオペラコンサート。
主催 | NHK、NHKプロモーション | |
---|---|---|
日時 | 平成26年1月3日(金) | 開場:午後6時 開演:午後7時 終演予定:午後9時 |
会場 | NHKホール | (東京都渋谷区神南2-2-1) |
出演者(五十音順) | [ソプラノ] | 安藤赴美子、大村博美、木下美穂子、幸田浩子、腰越満美 佐々木典子、砂川涼子、中村恵理、森麻季 |
[メゾ・ソプラノ] | 谷口睦美、林美智子、藤村実穂子、山下牧子 | |
[カウンターテナー] | 藤木大地 | |
[テノール] | 小原啓楼、錦織健、福井敬、村上敏明、与儀巧 | |
[バリトン] | 久保和範、堀内康雄 | |
[バス] | 妻屋秀和 | |
[合唱] | 新国立劇場合唱団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部 | |
[管弦楽] [指揮] |
東京フィルハーモニー交響楽団 下野竜也 |
|
[特別ゲスト] | ウィーン・リング・アンサンブル | |
[トークゲスト] | 假屋崎省吾(華道家)、ライナー・キュッヒル(ウィーン・フィル コンサートマスター)、宮本亜門(演出家) | |
[司会] | 鎌倉千秋アナウンサー |
曲目と紹介
当コンサートはテレビ、FMで同時放送。全23曲は予定通り2時間に収まりました。前回がヴェルディを記念していたこともあり『花が誘う」そのものである『椿姫』からのアリアは今回選曲されませんでした。
花がテーマで数多くのアリアが登場したのは新鮮な驚きでしたので、放送を見ての感慨と放送では時間の制約であらすじなどの説明がなかったのでまとめます。以前は字幕で紹介もされたのですけどね。全23曲、ちょっと長大になるので数回に分けて書きます。
1.歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」から開幕の合唱「オレンジの花はかおり」
マスカーニ作曲 出演:全員
全員が出演して顔を見せますが合唱を歌ったのは出演の合唱団総勢。
一幕物のオペラで『間奏曲』が有名。タイトルは『田舎の騎士道』という意味。主人公には結婚を約束した恋仲ローラが居たが徴兵されて戦争に行かなくてはならなくなった。彼が兵役に付いている間にローラは別の男と結婚してしまう。兵役を終え戻って状況を知るが恋焦がれる気持ちを拭い去ることが出来ない。とうとう二人はなさぬ仲に。
ここで静かで神に祈るような『間奏曲』が流れ、不貞がばれて決闘となり主人公は銃弾に倒れる。
最後は悲痛なオペラの開幕を飾る合唱は、復活祭を祝う明るく軽やかな音楽。
全体で60分ほどのオペラ。特別素晴らしいのがヘルベルト・フォン・カラヤンの録音。数多いカラヤンの有名な演奏の中でも屈指の録音です。
オペラとは関係ないことですが視界の鎌倉千秋アナウンサーが「名場面と名アリアを日本を代表するオペラ歌手の皆さんに披露していただきたいと思います」と紹介されたが、「披露して頂き、会場の皆さんとテレビでご覧の皆さんに楽しんでいただきたいと思います」と言いたいところ。あるいは『披露して頂きます』、『楽しんでください』で良いはずなのですが最近どうも、当事者でありながらも第三者のような表現が気になっています。
これ以外は支障はありませんでした。
2.歌劇「ラクメ」から「花の二重唱」
ドリーブ作曲 出演:幸田浩子(ラクメ/ソプラノ)、林美智子(マリカ/メゾ・ソプラノ)
池の畔で歌う花の妖精。ソプラノとメゾ・ソプラノのデュエットですが声色の似た二人の歌手が歌うことで、一人が二重に歌っているようなファンタジックな効果を感じます。
最近コマーシャル等で親しみ深い音楽。全曲盤は長いこと満足のいく録音はありませんでした、ナタリー・デセイの全曲盤も発売から随分と経過しましたが良い録音ではベスト1です。
3.歌劇「カルメン」からハバネラ「恋は野の鳥」
ビゼー作曲 出演:谷口睦美(カルメン/メゾ・ソプラノ)(初出演)、新国立劇場合唱団、二期会合唱団、藤原歌劇団合唱部
カルメンは最も有名なオペラ。兵隊に投げつける花がバラだったりしますが、台本によればアカシア。セビリアでアカシアは街路樹として日常的な存在で花の香が芳しい。その花言葉は優雅、友情、そして秘密の愛。今回合唱団員は赤い花を手にしてましたが、カルメンは豊満な胸の谷間に黄色いアカシアを一房挿していました。日本でもスタイルの良いカルメンが楽しめる期待がします。メゾ・ソプラノの谷村睦美さんは今回ニューイヤー・オペラ・コンサート初出演。
4.歌劇「カルメン」から「お前が投げたこの花は」
ビゼー作曲 出演:村上敏明(ドン・ホセ/テノール)
カルメンが歌う『ハバネラ』と対に歌われることが演劇的にも楽しい。名歌手の超絶技巧とドラマの良さの両方が成立しているオペラで入門者向けでもあり、新しい演出にはドキドキ胸躍るし一般的な演出を何度観てもスリルがある。
スリムで理知的なカルメン、エキゾティックなカラスのカルメン。カルメンの演出にもアカデミックな解釈が増えてきましたが、谷村睦美さんのカルメンにカラヤンが、バルツァで制作した舞台を重ねあわせて観てました。
5.歌劇「蝶々夫人」から花の二重唱「桜の枝をゆすぶって」
プッチーニ作曲 出演:大村博美(蝶々夫人/ソプラノ)、山下牧子(スズキ/メゾ・ソプラノ)
舞台は明治時代の日本の長崎。歌劇全体は見たことがなくても日本人にはオペラになっている日本の物語だと浸透しています。明治維新、郭に身を置いて家族の生活を支えた士族の娘は多かったといいます。蝶々さんもそうした士族の娘でした。最後で会見で自決する激情的な場面。アメリカに帰ってしまったピンカートンの帰りをひたすら待ちながら思い出を振り返る『ある晴れた日に』。
愛の場面を演出するハミングコーラスなどはエキゾティックで類を観ません。花の二重唱は日本的叙情が出ています。
6.歌劇「蝶々夫人」から「愛の家よ、さようなら」
プッチーニ作曲 出演:小原啓楼(ピンカートン/テノール)、久保和範(シャープレス/バリトン)
長年留守にしていた長崎に戻ってきたピンカートン。駐留している間の恋女房を世話したシャープレス。でも、今回はピンカートンはアメリカの妻を同伴している。歌劇『蝶々夫人』の中唯一、ピンカートンの心境だけが様々に演出で変化する。音楽はどこもそこも聞き所ばかり、ストーリーはストレートですが歌手の取り合わせでこれほど変化に富むオペラはプッチーニの個性ある特色です。
三浦環の像を長崎旅行で見たのが蝶々夫人への興味でした。江戸から明治になった時、蝶々さんの様な女性は多かったのでしょう。蝶々夫人が自害した後残された男子はピンカートンが連れてアメリカに渡りました。このオペラ『蝶々夫人』の続編が今後定着するかどうか、蝶々夫人というファンタジーとして日本人は楽しみたいのかもしれません。
(つづく)
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
指揮:下野竜也
司会:鎌倉千秋アナウンサー
トークゲスト:假屋崎省吾(華道家)、ライナー・キュッヒル(ウィーン・フィル コンサートマスター)、宮本亜門(演出家)
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